(第16回)2016年グローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査結果について ――― 世界から見た日本企業の経理・財務部のすがた(2)

どうする日本の経理・財務部 — 或るCFOのつぶやき

「 2016年グローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査結果について
――― 世界から見た日本企業の経理・財務部のすがた(2) 」

2017年9月4日

 

当社が行った、2016年グローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査について、前回のブログでは、公表された調査結果を、主に日本との比較を交えながらその概要を説明しました。

今回は、公表された調査報告書では言及されていませんが、サンプル数こそ多くはないものの、日本の経理・財務部からの回答が非常に面白く、その悩みや今後に向けて模索する様子が大変よく分かる内容になっていますので、それをご紹介したいと思います。

日本についてのデータに焦点を当て、世界から見た日本企業の経理・財務部のすがたを考えることにより、日ごろ私たちが抱える課題を少しでも改善するための参考になればと願っています。

 

1.日本の調査の概要

日本の回答者の属性について、簡単に見てみます。企業の収益規模は1000億円以上の大企業が最も多く、また、業種別に見ると金融業および製造業が多く、この2業種を合わせると半数を超え、あとは電気、エネルギー、薬品となっています。

次に、回答をいただいた各社の経理・財務部の規模ですが、所属する社員が20名以上の企業が約半数となっています。これは、グローバルに比較した場合、全調査対象約1,000社のうち、社員規模20名以上の企業は14%と極めて少ないにも拘らず、10人以下の規模の企業が747社(76%)もあることを考えると、日本の経理・財務部に所属する社員数が如何に多いかが分かります。

また、日本の経理・財務部の企業グループ全体における組織的な建てつけをみると、グローバルには約60%の企業において、本社の財務チームが海外およびグループ会社を含む全社を統括する機能を備えているのに対し、日本では、そうした機能を持つ企業はわずか14%に過ぎず、残りの86%は海外あるいはグループ会社ごとに財務チームがあり、本社財務部では必要に応じそれらを集計するような形となっています。日本の経理・財務部では、グローバル化やグループ化が急速に進展しているにも拘らず、未だ海外やグループ会社全体を統括する機能が整備されていない様子が伺われます。

<表1.財務組織>

2.ビジネス課題

日本の経理・財務部が直面する様々なビジネス課題のなかで、規制面の重点課題としてはIFRS9への対応が最も多くあげられています。また、財務・リスク管理面の重点課題としては、「資金の可視化と最適化」「為替のリスク管理」が最も多くあげられています。

<図1.財務・リスク管理面の重点課題>

一方、日本の特徴的な点は、こうしたビジネス課題に対する解決策として、「スタッフの質の向上」が最も多くあげられていることです。世界的には、こうした課題に対しては、「テクノロジーの導入」

「ポリシーやプロセスの見直し」等がその解決策としてあげられているのですが、人による対応で処理しようとしている所は、良くも悪くも如何にも日本的という気がします。

<図2.ビジネス課題の解決策>

3.財務ベストプラクティス

日本企業を取り巻く環境は、大きく変化しています。こうしたなかで、財務機能は今後どのような形で高度化していくべきかについての調査結果は、次のように大変興味深いものとなっています。

[ 財務機能の役割 ]

日本の経理・財務部の100%が、企業における財務機能は今以上に重要になってくると考えています。グローバルには67%ですので、その割合は非常に高いように感じられます。日本の場合、自らの役割の重要性をすべての企業が認識している事は、ある面、素晴らしいことだと思います。

一方、財務チームの規模については、日本の経理・財務部の62%が現行の組織の拡大は無いと見ています。しかしながら、財務機能の対象範囲(Scope)については、81%が今よりも拡大することは間違いないと答えています。

また、現状の財務機能において欠けているものとして、日本の回答者は、「質の高いスタッフの不足(Lack of qualified staff)」と「ITの導入不足(Lack of technology)」を上げています。こうした見方は世界の趨勢と変わりませんが、しかし、その機能の強化を、グローバルにはITの導入によって解決しようとするのに対して、日本ではITの重要性を認識しながらも人海戦術に頼ろうとしている点において、大きな差があるような気がします。

[ 一元管理 ]

財務の一元管理、集中管理については、日本の経理・財務部の80%がその必要性を回答しています。グローバルレベルでの51%に比較して、日本では、現在の財務機能あるいは財務組織がグローバル化およびグループ化に対応していない現状を十分に認識しており、これに対する大きな危機感があるようです。

[ 財務テクノロジー ]

経理・財務部門が抱える様々なビジネス課題に対して、ITテクノロジーが最も有効な手段であると考えていることについては、グローバルな全体調査においても、また、日本の調査結果においても、ともに80%を超える回答がなされています。しかし、そのための具体的なソリューションとして現在利用しているのが、グローバルではTMS(Treasury Management System)が最も多く44%なのに対し、日本では17%と低く、表計算(Spreadsheets)という回答が33%で一番多かったのには、少し驚かされてしまいます。

恐らく、多くの日本の経理・財務部では、いまだにTMSの機能や概念が十分に認識されていないことに起因するように思われます。これは、日本企業において、現在使っている財務システムの更新がなされたのが2010年以前である割合がなんと40%以上もあり、2014年以降においてシステムの見直しや新たな機能追加がなされた企業がたった10%にも満たないという調査結果を見ると、最近の日本経済の急激な変化のスピードと比較してその時代遅れの状況に、驚きを越して不安を感じてしまいます。

<図3.現在利用している主な財務テクノロジー>

4.最後に

今回のグローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査における、日本の経理・財務部からの回答結果を見る限り、グローバル化やグループ化などその直面する課題に対して、非常に混乱している様子が伺われます。当然のことながら、このままの状態が続くとすれば、新しい時代に求められている経営推進機能が十分に果たされず、日本企業自体の国際競争力の弱体化につながることとなるのでは無いでしょうか。

日本経済が、アベノミクスにより少なからず景気回復のプロセスをたどり始め、グローバル競争にも本格的に進出しようとしている中、日本企業の経理・財務部はそうした動きをリードする役割を求められているのだと思います。

現在、日本経済が“産業のデジタル化”を進めようとしているなかで、日本企業の経理・財務部は“財務のデジタル化”を進めなくてはいけない時期に来ているのではないでしょうか。

以上

 

ブログについて

どうする日本の経理・財務部ー或るCFOのつぶやき 
大手情報通信会社にて長年企画・財務業務に携り、その後、金融子会社でグループのトレジャリー・マネージメント・システム導入に携ったCFOによるブログ。
執筆者の経験を元に、今の日本企業における経理・財務部の在り方や課題について感じたこと提案、今、日本企業が直面する大きな変化にどのように立ち向かうべきかという執筆者の考えを、現在経理・財務部門で働く人たちに向けて語ります。

執筆者プロフィール
Reval Japan株式会社 会長、今川 愼一(いまがわ しんいち)
大手情報通信会社にて長年企画、財務業務に携り、その後、金融子会社のCFOを務める。グループのGCMS、TMSシステム導入を図り、財務のグローバル化を推進する。

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