(第15回)2016年グローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査結果について ――― 世界から見た日本企業の経理・財務部のすがた(1)

どうする日本の経理・財務部 — 或るCFOのつぶやき

「 2016年グローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査結果について
――― 世界から見た日本企業の経理・財務部のすがた(1) 」

2017年8月23日

当社が行った、2016年グローバル・トレジャリー・ベンチマーキング調査結果が公表されました。
日本企業の経理・財務部にとって今後の進むべき方向を示唆するような大変興味深い結果が出ているので、2回にわたってそのポイントを取り上げてみたいと思います。今回は、主に公表された結果について、日本との比較を交えながら考えてみたいと思います。また、次回は、サンプル数こそ多くはないものの、日本の経理・財務部からの回答が非常に面白く、その悩みや今後に向けて模索する様子がよく分かる内容になっているので、それをご紹介したいと思います。
現在の日本企業の経理・財務部が抱える課題を改善する上で、少しでも参考になればと願っています。

 

1.調査の概要

世界中の約1000人の財務専門家から寄せられた回答を分析したものです。北米・EMEA・APACの3地域に区分された世界の財務部門の現状やその趨勢が分かる結果となっています。これまで、企業自体の世界比較は、売上げ、商品開発、経営手法等、様々な形で分析され、報告されてきましたが、こと財務部門の組織や機能に関する世界比較がなされたものは無かったように思います。世界の企業における財務部門の機能やシステムの現状と日本のそれとを比較することは、日本の経理・財務部の今後の在り方を探る上で非常に有益なことだと思います。何より、日本企業が現在直面するグローバル化に対して、一歩先に行く欧米の財務部がどのように取り組んでいるかは、大いに参考になるものと思います。

2.財務部門におけるグローバル化への対応

世界の企業は、ビジネスのグローバル化に伴う事業規模の拡大と業務の複雑化への対応が経営上の大きな課題となっています。企業の財務部門においても、そうした経営の要請に応えなくてはなりません。一方、ITの分野においては、AI、ビッグデータ、モバイル、クラウドなどデジタル技術の急速な進化をベースに、アナリティクス、ロボティクス等の応用技術が加わり、企業の課題解決に大きな進展をもたらしています。ビジネスにデジタル技術を活用して大きな変革をもたらす“Digital Transformation”、すなわち、“産業のデジタル化”が世界的に進んでいることはご存知の通りです。金融界においては、こうした動きは“FinTech”として注目され、企業の財務部門にも大きな影響を与えています。地球規模で拡大しかつ複雑化する財務情報をリアルタイムで集積・分析し、迅速な経営判断が出来るように視覚化することが、“財務のデジタル化”によって実現されようとしているのです。

3.ビジネス課題

ビジネスが急速にグローバル化する今日、世界中の財務部門が直面する課題として、めまぐるしく変わる経営環境への対応があります。今回の調査によれば、規制面の重点課題として、IFRSに代表される会計規則や法規制への対応が最も多くあげられています。また、財務・リスク管理面からは、「資金予測と流動性計画」「資金の可視化と最適化」、「為替のリスク管理」などが上げられています。恐らく、M&Aが増加した結果、地理的な組織の拡大と複雑化する事業運営への対応が求められているのでしょう。また、財務部門の人員数についての調査結果では、売上げが2兆円に達するような大企業の多くでも、わずか10程度の人数で構成されています。日本では、企業の規模にもよりますが、この何倍もの人数がいるでしょう。少ない人数で増大する業務に対応するためには、財務部門のデジタル化が無くてはならない方策になっているはずです。反面、日本の経理・財務部門では人海戦術によって業務をこなしているといえそうです。本格的なグローバル化に直面している日本企業の財務部門は、デジタル化の面では大きく遅れている状態にあるといえそうです。

(財務部の未来)

企業における財務部門の重要性について、今回の調査では、今後ますます高まると答えた割合が68%にも上ります。また、財務部門は、営業、企画など他部門との連携を強め、その業務範囲を拡大し経営力の強化を図ることを期待されていることが伺えます。日本の経理・財務部は、従来、会計・税務のための決算数値の取りまとめに重点が置かれ、どちらかというと過去志向でした。今後は、財務情報が経営の強化につながるような、未来志向になることが求められてくるでしょう。
一方、財務部門の組織についての調査結果では、世界のどの地域においても同様に、人的規模は増加されないだろうと見込んでいます。日本企業の財務部門の一員として、身にしみて納得させられる結果ですが、ITテクノロジーの導入がこうした観点からも不可欠になってくることでしょう。

 

4.財務のベストプラクティス

財務機能は今後どのような形で高度化されるべきか、に関する調査結果は次のようになっています。

(一元管理)
地球規模でビジネスが拡大している以上、その財務管理は一元的かつ包括的に行われ必要があります。本調査では、あらゆる地域の財務責任者の50%以上は、一元的な管理が行われるべきだと考えています。わが国では、全銀システムやANSERにより、企業のマルチバンク・アクセスが比較的容易に実現できる環境にあります。しかし、グローバルにそれが可能かと問われれば、むしろ諸外国に大きく遅れをとっています。また、財務部、営業部などに分散管理されている情報を包括的に集積させる取組みも大きく遅れているのが、日本の財務部門の現状だといわざるを得ません。

(財務のデジタル化)
ITテクノロジーの導入状況についての調査では、売上げ規模が500億円以下の企業の多くでは、未だにEXCELによる表計算ソフトが用いられています。しかし、売上高が1000億円以上の大企業になると、TMSの利用が50%を大きく超える状況となっています。業務上の必要性や導入コストを踏まえれば、クラウドベースのSaaSシステムの普及が進むものと考えられます。

(財務テクノロジー)
世界の財務部門の多くは、財務・リスク管理の高度化に向け、共通プラットフォームを活用しリアルタイムで国内外の財務データを収集、共有化することを目指しています。調査結果では、44%の企業がすでにクラウドを導入しています。日本でも、ここ数年クラウドの活用が急速に進んでいますが、先日、セキュリティーを重視する金融界において、三菱UFJフィナンシャルグループがAWS(Amazon Web Service)の本格採用を公表したことは大きな驚きでした。クラウドを使ったSaaS型のサービスは、導入コストが安いことのみならず、規制環境の変化に対する柔軟な対応や迅速なサービス開始が可能になる等の利点があり、定型的で法規制の変化などへの柔軟な対応が求められるグローバルな財務システムには最適なものといえそうです。

グローバル化が進展する中、世界の企業はその対応に追われていますが、なかでも、多くの国において財務機能が十分に対応しきれていない面があります。しかし、ある面、今こそチャンスなのかも知れません。財務のデジタル化をいち早く導入することこそが成功要因となり得るからです。

今回の調査報告では公表されていませんが、日本についてのデータをもとに、世界から見た日本企業の経理・財務部のすがたについて、次回詳しくご紹介したいと思います。

                                   以上

 

ブログについて

どうする日本の経理・財務部ー或るCFOのつぶやき 
大手情報通信会社にて長年企画・財務業務に携り、その後、金融子会社でグループのトレジャリー・マネージメント・システム導入に携ったCFOによるブログ。
執筆者の経験を元に、今の日本企業における経理・財務部の在り方や課題について感じたこと提案、今、日本企業が直面する大きな変化にどのように立ち向かうべきかという執筆者の考えを、現在経理・財務部門で働く人たちに向けて語ります。

 

執筆者プロフィール
Reval Japan株式会社 会長、今川 愼一(いまがわ しんいち)
大手情報通信会社にて長年企画、財務業務に携り、その後、金融子会社のCFOを務める。グループのGCMS、TMSシステム導入を図り、財務のグローバル化を推進する。

 

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