(第8回) 今こそ、FinTech Go ! ― 日本企業にとってのFinTechの活用

どうする日本の経理・財務部 --- 或るCFOのつぶやき

(第8回) 今こそ、FinTech Go ! ― 日本企業にとってのFinTechの活用

2016年8月26日

 今、世界中で最も流行しているものと言えば、“ポケモンGo !”。私もご多分に漏れず、子供に教わってゲームソフトをインストールした途端すっかりはまってしまい、あちこちにポケモンの補獲に出かけています。単に、ゲームと笑ってはいけません。普段は部屋の中に籠ったり、PCの前に座っていた何億人と言う人達を一斉に街に繰り出させ、人間の行動パターンに大きな変化をもたらしているのである。
日本企業の経理・財務部も、従来の殻に閉じこもって安穏と過ごせる時代は終わったようです。進展するFinTechは、金融機関のみならず経済活動全体に影響を及ぼし、一般企業といえどもその機能を積極的に取り入れなくては、世界の競争から取り残されようとしています。今こそ、“FinTech Go !”なのです。

 

1.FinTechの本質
『 われわれは、グーグルやフェイスブック、そうした企業と競合する事になろう 』
この言葉は、一体誰から発せられたものと思いますか?シリコンバレーの新興IT企業か、鼻息の荒いネット事業者からのものと一見思われますが、実は、世界最強と言われる金融機関JPモルガン・チェースの総師ジェイミー・ダイモンの言葉なのです。欧米の大手金融機関は、デジタル・テクノロジーを金融機関におけるビジネス戦略の本質的なエンジンとして認識し始めている、という事なのでしょう。FinTechの登場によって、「IT企業による金融サービスへの参入」が注目されて来ましたが、さらに、JPモルガン・チェースのように「金融機関のIT企業化」といった動きが進んでいます。そして今や、金融機関のみならず、あらゆる企業がインターネットをベースにした「第4の産業革命」といわれるIT化の動きに直面しています。
元より、FinTechは、インターネットの発達を背景に、AI、クラウド、ビッグデータ等のIT技術に支えられ、情報の伝達・収集・利用が革命的に高速・大容量化した結果、多様な金融サービスが低廉な価格で提供されるようになったものです。これは、企業活動にも大きな影響を与え、特に、グローバル化・グループ化・ガバナンス化という“3G”の変化にさらされている日本企業にとって、FinTechの活用は大きな競争力を生み出す原動力になるものと思われます。特に、クラウド技術は、ITを用いたイノベーショナルなビジネスモデルの構築と運営を容易にしています。巨大なシステムを自ら所有するか、或いは、必要な機能だけをネット上で利用するかという本質的な発想の違いが、様々なイノベーションに繋がっているのです。

(図1)クラウドとオンプレミスのコスト対規模の関係

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(出典:ビットアイル・エクイニクス コラム「クラウドと物理。どちらを選ぶべきか?」)

 

2.企業に対するFinTechのインパクト
企業活動において、最も重要な情報処理の一つは資金決済だといえますが、それに係るコストが高く、一向に安くならないことに疑問を持っている人は多いと思います。特に、海外送金手数料は1件当たり未だに数千円であり、私がNYに駐在していた20年前と少しも変わっていません。こうした送金や決済に係る手数料の引下げが行なわれれば、企業活動に大きな影響を与えることは明白です。最近、横浜銀行と住信SBIネット銀行が、ビットコイン等の仮想通貨で利用されている「ブロックチェーン」技術を利用して、新しい送金・決済システムを構築し、来年からサービスを開始すると発表しました。従来、国内は全銀システム、海外はSWIFTによって運用されていましたが、現在の利用環境に照らして言えば、些か不便な面のあることは否めませんでした。新しいシステムでは、国内外への送金コストは何と10分の1~20分の1程度に抑えられる可能性があるといいます。本当に、驚きです。

(図2)①国内振込手数料の例 (他行宛て)
(2016年8月現在)

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②海外送金手数料の例

(2016年8月現在)

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(注)上記の他、受取側銀行でも、10~30ドル程度の手数料が必要。

 

FinTechはその発生の経緯から、当初、提供されるサービスは一般マス向けが多かったものの、本来、FinTechが情報流通のパラダイムシフトの結果であることを考えると、情報の収集や分析の高度化、見える化等、企業活動に対しても大きな影響をもたらすものと期待されて当然です。現在、図3に示されているように、預金・融資や送金・決済のみならず、経営支援、リスク管理、資金管理等まで、広範な企業向けのFinTechサービスが提供されています。FinTechという最新技術をいかに企業活動に取り入れるかが、企業の成長戦略としての重要性を増していると思います。特に、企業の経理・財務部門において、その活用の重要性と緊急性は一段と高いものになっているといえます。

(図3)企業向けFinTechサービスの例

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(出典:経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」資料より作成)
3.FinTechによる攻めの財務活動
FinTechの導入が進めば、その先には、企業における経理・財務活動の捉え方が変わってきます。これまでの経理・財務機能、或いはそのシステムは、主に企業内部のバックエンドに位置付けられ、利用されてきました。どちらかというと、企業活動の結果の取りまとめであり、その後の対外開示や納税処理に重点があったと言っても過言ではないでしょう。しかし、これからは、企業活動の最前線のフロントにまでその影響する範囲を拡大し、活用されることが求められてくるでしょう。たとえば、顧客との取引に係る決済・送金が一元化され、銀行取引を始めとする資金の調達・償還等を含めた企業活動の全てがCMS(Cash Management System)等を通じてキャッシュ・フローとしてリアルタイムで把握することが可能となります。その結果として、経営状況のダッシュボード化やリスク管理がフロントエンドで実行されることから、その機能はまさに経営と一体となっていくものと思われます。従来の経理・財務部は、企業活動の中間的な情報処理として止まり、その多くを人手に頼って進めてきたのが実情です。財務のIT化であるFinTechは、これらのプロセスを一変させ、コストの削減、業務処理スピードの向上、より的確な経営判断の推進に役立つことになります。FinTechの導入による攻めの財務活動を実現する事により、経営の強化につなげていくことが出来るのです。今こそ、"FinTech Go!"なのです。

以上

ブログについて

どうする日本の経理・財務部ー或るCFOのつぶやき 
大手情報通信会社にて長年企画・財務業務に携り、その後、金融子会社でグループのトレジャリー・マネージメント・システム導入に携ったCFOによるブログ。
執筆者の経験を元に、今の日本企業における経理・財務部の在り方や課題について感じたこと提案、今、日本企業が直面する大きな変化にどのように立ち向かうべきかという執筆者の考えを、現在経理・財務部門で働く人たちに向けて語ります。

 

執筆者プロフィール
Reval Japan株式会社 会長、今川 愼一(いまがわ しんいち)
大手情報通信会社にて長年企画、財務業務に携り、その後、金融子会社のCFOを務める。グループのGCMS、TMSシステム導入を図り、財務のグローバル化を推進する。
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