(第2回)“やんなきゃ”、経理・財務部のグローバル化

どうする日本の経理・財務部 --- 或るCFOのつぶやき  (第2回)“やんなきゃ”、経理・財務部のグローバル化 

 

2016年3月15日

今、最も先進的な産業分野は、自動車ではないだろうか。先日、シリコンバレーに行く機会があったが、Google、Appleをはじめ多くの世界的IT企業が、Big Data、AI、GPSなどの先端技術を駆使し、自動車の自動運転に向けて一斉にしのぎを削っていた。また、珍しく、日本のベンチャー企業が、この分野では大いに健闘しているのも印象深かった。

日本でも、大手自動車会社のTVコマーシャルで、有名なロック歌手が、“やっちゃえ、○○”と、ともすれば安全サイドに流れがちな日本企業のお尻を叩いている。さて、同様に、本格的なグローバル化が進む日本企業の経理・財務部門も、いよいよ自らのグローバル化を“やんなきゃ”いけない時が来ているようだ。

1.グローバル化の質的変化

戦後、海外への輸出によって成長してきた日本経済。今日に至るまでの70年間、日本の企業は、その海外進出を様々なステップの変遷をたどりながら進めてきた。そして、そのステップが上がるたびに、販売、生産、管理といった、従来、国内にあった機能が徐々に海外に移転していくこととなった。近年、こうした動きはますます加速し、製造業を中心に国内産業の空洞化が問題とされるようになって久しい。

(図1)海外進出企業の移転機能の変化

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※参考文献:柳川太一「日本企業のグローバル化再考/グローバル化への4つのハードル」(シリーズ 日本経済を考える⑯)

 

日本の製造企業の海外売上高比率は、2004年度の29.1%から2015年度には38.9%とこの10年間に約10%増加している。また、上場企業においても、売上高の50%以上を海外で占めている企業が380社(全体の約11%)に上り、更に、2015年第2四半期の主要上場企業(110社)の海外売上高比率は67.6%となり、四半期として過去最高を更新している(注)。今や、単に経営機能の一部を海外に移転するという時代は終わり、経営そのものが国内や海外という区別なく国境を越えて地球規模に拡大する、質的大転換の時代を迎えていると言えます。

(注)日本経済新聞調査

(図2)日本企業の海外売上高比率の分布

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出典:連結海外売上比率(海外進出)ランキングより http://nihonkigyouranking.blogspot.jp/2014/05/blog-post_8.html

 

2.LocalizationとCentralization

市場開拓を目的に販売等の一部機能を海外に移転した初期ステージの過程では、市場の地域性や進出した国の法的規制の違いなどにより、販売や生産拠点等を現地に設立する動き(Localization)が進んだ。一方、現在、急増する海外拠点の各種経営情報を集約し、統一的な経営を推進するための中枢機能として、日本国内の本社をより強化していく動き(Centralization)が強まっています。事業運営に係る様々な権限の分散化を図ったとしても、企業ガバナンス上の最高経営責任者は一人であり、必然的にこうした組織体系を取らざるを得ない面もあろう。また、海外投資家を意識したディスクロージャーの精緻化や連結決算が一般化したこと等も、国内本社機能のグローバル・センターとしての役割を強める動きの大きな要因となっていると思われます。現在、多くの日本企業で採用されつつあるIFRSでも、金融商品のリスクやキャッシュ・フロー等において、その管理及び評価方法を含めたより詳細で適切な開示が要請されている。グローバル企業が直面する、信用リスク、市場リスクや地政学的リスクなど急激に変化する経営環境に機動的に対応するため、グローバルな財務情報の収集・分析は欠かすことのできないものとなって来ています。
しかしながら、海外拠点の重要な経営情報を国内本社に集中させるに当たり、それが可能となる適切な体制を整えている企業は未だ多くはありません。経理・財務機能のグローバル化の前には、財務情報の「可視化の課題」、そのための財務データを迅速に収集する「財務システムの課題」、そして、何より「言葉の課題」が大きく立ちはだかっているのです。

3.Japan StandardとGlobal Standard

日本製品の品質の高さとサービスの優秀性は、今更言及するまでもない。こうした市場競争力のある生産システム等の日本的基準(Japan Standard)の海外展開は着実に進んできました。一方、日本企業における、国内及び海外子会社等を含めたグローバル基準(Global Standard)の経営の効率化、高度化は大きく立ち遅れており、その解消は喫緊の課題となっています。

260年の長い鎖国の時代から高々百数十年しか経っておらず、戦後の焼け野原からも70年しか経っていない我が国の歴史を振り返れば、企業のグローバル化がそう易々と実現できるものではないだろう。16世紀に「太陽の沈まぬ帝国」を築いたスペイン、1600年に既に東インド会社を設立し大航海時代を迎えた英国等、世界規模の経営を進めてきた歴史を持つ欧米諸国と同列に語ることは難しい。しかし、好むと好まざるとに関わらず、日本企業が世界規模の競争に巻き込まれている以上、グローバル化は避けて通れない課題であることも、事実である。先に合意をみたTPPも、こうした動きを一層加速することでしょう。

経営のグローバル化を推進するため、経理・財務部のグローバル化を、早く“やんなきゃ” とつぶやく所以なのです。

以上

ブログについて

どうする日本の経理・財務部ー或るCFOのつぶやき 
大手情報通信会社にて長年企画・財務業務に携り、その後、金融子会社でグループのトレジャリー・マネージメント・システム導入に携ったCFOによるブログ。
執筆者の経験を元に、今の日本企業における経理・財務部の在り方や課題について感じたこと提案、今、日本企業が直面する大きな変化にどのように立ち向かうべきかという執筆者の考えを、現在経理・財務部門で働く人たちに向けて語ります。

 

執筆者プロフィール
Reval Japan株式会社 会長、今川 愼一(いまがわ しんいち)
大手情報通信会社にて長年企画、財務業務に携り、その後、金融子会社のCFOを務める。グループのGCMS、TMSシステム導入を図り、財務のグローバル化を推進する。

 

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